赤報隊事件は日本で新聞記者が政治的なテロにより殺害された唯一の事件です。
犯人が捕まらないまま2003年公訴時効を迎えた未解決のテロ事件、どういう事件だったのか見ていきましょう。
赤報隊事件をわかりやすくまとめ!現場の場所やいつ起きたのかも確認
赤報隊事件を調べる新聞社や右翼団体、政治や宗教といった難しそうなニュースと思う方がいるかもしれません。
ですがこの記事では事件を分かりやすくまとめていきますので、これを期に何があったのかを知って一緒に考えていきましょう。
事件はいつ起きた?時代背景なども確認
事件は1987年(昭和62年)~1990年(平成2年)に起きました。
1987年はアサヒスーパードライが発売、エイズパニック、ビックリマンシールがブーム、中国では北京天安門で数百人規模の学生デモがあった年でした。
事件現場はどこ?場所や住所も確認
事件現場は兵庫県西宮市与古道町1-1の朝日新聞阪神支局です。
赤報隊事件をわかりやすくまとめ!犯行内容や事件の流れとは
事件概要
1987年5月3日のゴールデンウィーク、この日朝日新聞阪神支局で深夜の当番勤務の3人、K記者(29)、I記者(42)、T記者(25)が勤務していました。
- 午後7時過ぎK・I・Tの3人の記者は支局内の編集室で夕食を取っていました
- 午後8時15分頃黒ぶちメガネに黒い眼出し帽、全身黒い服の男が散弾銃を持って編集室へ侵入してきました。
男は1発目ソファに座っていたI記者の胸あたりへ発砲し、2発目K記者の腹あたりを打ち、T記者は撃たれず男は一連の犯行時間1分程度でその場を立ち去りました。
I記者、K記者とも救急搬送されましたがI記者は胸を打たれましたが胸ポケットに入れていたボールペンに弾丸が当たった為急所を外し、一命を取りとめたものの右手薬指と小指を失いました。K記者は体に入った散弾粒200粒が胃のあたりで飛弾し、翌5月4日死亡しました。
こんな映画やドラマのような惨劇事件が日本で起きていたのですね。
散弾銃を所持し1分足らずで犯行を行うとは銃の扱いにも慣れている人物の犯行です。
この赤報隊を名乗る団体は合計7件の事件を起こしています。
ですが殺人事件としては5月3日の事件のみでした。
赤報隊を名乗る団体の一連事件
- 1987年1月24日 朝日新聞東京本社銃撃事件
- 1987年5月3日 朝日新聞阪神支局銃撃事件
- 1987年9月24日 朝日新聞名古屋本社社員寮銃撃事件
- 1988年3月11日 朝日新聞静岡司局爆破未遂事件
- 1988年3月11日 元総理大臣中曽根康弘、竹下登脅迫事件
- 1988年8月10日 江副浩正リクルート会長宅銃撃事件
- 1990年5月17日 愛知韓国人館放火事件
事件後の脅迫電話
5月3日の事件後朝日新聞に脅迫電話が300件以上かかってきました。
などという恐ろしいものでした。
この7件中4件は朝日新聞を銃撃、爆破しており朝日新聞に対する強い恨みが感じられます。元首相2人も脅迫するなど普通の団体ではなさそうです。
爆破するなどの電話が300件以上とは朝日新聞に勤務されていた方は恐怖だったでしょう。自分がそんな電話を何度も取る事になったらトラウマになりそうです。
そしていつ本当に爆破されるかもしれないと思うと仕事が手につかなかったのではないのでしょうか。この電話の数を見てもかなりの人数の団体と考えられます。
赤報隊事件の犯人は誰?事件の真相や宗教団体との関わりとは
この事件の犯人は誰なのか?犯人像や有力説、そして宗教団体との関わりが浮上しています。詳しく確認していきましょう。
なぜ未解決なのか?その理由や原因とは
犯人の団体は右翼団体である可能性は高いですが、特定とはならず未解決のまま2003年に時効を迎えています。
宗教団体説も浮上し真相を探ろうとすると打ち切りになったり、目星がついた人物に接触しても関与を否定されたり、タレコミ情報があって解決ならず、結局犯人に繋がる証拠は何もないまま現在に至ります。
犯人象や有力な説とは
右翼団体と考えられる本事件は犯人像が様々挙げられています。
目だし帽にめがねまでかけているので顔の特徴もない事から捜査は難航しました。
犯行時間が1分程度と短いにも関わらず、目だし帽にめがね姿の状態で年齢が20~40歳と予測がつくものなのですね。
どうやら体型、体格から20~40歳代と判断されているようです。
目しか見えていないなら日本人じゃない可能性もあるのではないでしょうか。
右翼説が強くても実行犯は犯人に依頼された外国人の可能性もあるのかもしれません。
犯人が訴えていたこと
赤報隊が声明文で訴えていることは下記の通りです
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「靖国参拝や教科書問題で日本民族を裏切った」
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「処刑リストから外して欲しければ竹下(元首相)に圧力をかけろ」
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「反日朝日は50年前にかえれ」
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「日本人が日本の文化伝統を破壊するという悪しき風潮」
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朝日新聞、毎日新聞、東京新聞を「反日マスコミ」と表現
戦後の民主主義体制を否定し戦前に戻る事を訴えているようです。
兵庫県警は右翼に精通している人物とし朝日新聞に敵意を持ち東海地方に拠点のある者のテロとしました。
右翼団体説
朝日新聞は中曽根元総理の靖国参拝や過去の戦争の正当化を批判していました。
その当時警察が目をつけていた右翼関係者を事情聴取しましたが、人を殺すなら責任を取るとして本事件との関わりは強く否定しました。
確かにこの説は濃厚だと思います。右翼団体の可能性は犯行声明からもよく分かりますし、新右翼説はあると思いますが、かといって犯人を特定するには犯人の情報が少なすぎて逮捕するには難しいですね。
元自衛官説
2001年朝日新聞大阪本社へ匿名で奇妙なタレコミ電話がありました。
「実行犯は右翼思想の30代の元自衛官だったが自衛官を辞め、関西で寺の住職になり数年前に死んだ」という内容でした。
仮にこの該当する人物が実行犯だとして、わざわざ連絡してきた者は何故事件から14年も経って伝えてきたのでしょうか?この事件をもう探るなという警告なのか、時効前に犯人を知らせてくれたのかどちらだったのでしょうか。
元安部首相の銃撃事件とかぶるワード(元首相、元自衛官、拳銃、統一教会)が沢山あることに驚きです。
インテリ系右翼説
犯行声明の文章がとても手慣れており右翼思想的な表現をし、東京都を略し都内と表現したり、関西、中京方面という表現方法や、東京新聞も標的にしたことから東京を拠点とする全国規模の右翼的思想の組織という説があります。
この説はどうでしょうか?個人的には7度の事件はほぼ西日本で起きているので西日本を拠点とする団体のような気がしますが、この説も有力視されています。
事件の真相や報道されない事実はある?最新情報や新たな事実
実は朝日新聞静岡支局爆破未遂事件で、警察が事件後に周辺で採取した指紋と一致した人物が関東で捕まっていた50代の男性の指紋と一致したのですが未解決のまま時効が成立しているという事は、指紋が一致しても証拠がなかったという事なのでしょう。
(朝日以外の)全国紙の新聞社がこの事件をテーマに社説を全く論じないのはかなり違和感があります。自分たちも標的にされるのを恐れての事なのでしょうか。
解決への糸口となるポイントとは?
警察は右翼関係者から9人をリストアップしました。
声明文にもある反日という言葉を使い強く発言し、銃を所持して逮捕歴がある者や殺人未遂を起こした人物などが挙げられました。
警察が9人をマークしましたが犯人とする証拠にたどり着かなかったのでしょう。
この9人ではなかったとしてもこの人物に近しい者の可能性もあります。
但し時効を迎えているので、犯人と特定できるものが出てきても2010年時効撤廃前の事件の為犯人が逮捕されることはないのでしょうか。
赤報隊事件と宗教団体の関係とは?
朝日新聞阪神支局は事件の前年頃から統一教会の霊感商法を厳しく批判していました。
そして事件当時統一教会は全国で鉄砲店を経営していたので銃の入手が可能だったことから様々噂されるようになります。
統一教会は先日の安倍首相銃撃事件から判明した通り自民党と関係がある団体です。
ここまで統一教会の可能性がありながら不思議な事に統一教会への捜査は行われなかったと言われています。
赤報隊事件の被害者は誰?遺族やその後とは
こんな悲惨な事件の被害者は誰なのでしょうか。そして遺族の方の現在について詳細を見ていきましょう。
被害者は誰?実名や顔とは
被害者の新聞記者は下記の3人です。
I記者・・・犬飼兵衛氏
K記者・・・小尻知博氏
T記者・・・高山顕治氏
亡くなった小尻記者は当時29歳と若い記者でした。
被害者の遺族の現在やその後とは?
2022年5月3日朝日新聞阪神支局では小尻さんの遺影を掲げた祭壇が設けられ、周辺市民が追悼に訪れました。
また小尻さんの母親のみよ子さんは2015年7月肺炎で死去しました。
亡くなった小尻知博さんと同じようなメディアを選んだのはお父様の分までメディアの世界で頑張るという意思が感じられます。
赤報隊事件によりその後変わったことは?
事件後新聞各社やテレビ局は言論の自由の抑圧への脅しにひるまず、言論には言論で対処すべきとして報道の自由は民主主義のあるべき姿として強くアピールし、このようなテロが起きたから怯むのではなく、正々堂々と言論で戦う事を公表しています。
元安部首相の銃撃事件を思わせるこの赤報隊事件は謎に包まれたまま未解決となっていますが、仮に実行犯が亡くなっていても逮捕されたとしても、組織的な犯行と思われますのでいつまたこういう事件が起きる可能性も十分あると思います。
現に声明文に「この活動は続くであろう。我々は日本のどこにてもいる」と書かれています。
NHKスペシャル 未解決事件 赤報隊事件
— レイコ (@arareiko1) June 8, 2019
いつの時代も
心に響く🔥 pic.twitter.com/Qcq4HzxjA5
本事件の再現ドラマNHKスペシャル未解決事件6作目で赤報隊事件を取り上げており、2018年1月27日から2夜連続で放送されました。
草薙剛さんや上地雄介さんが事件を追いかける特命取材犯を演じており、迫真の演技で当時の状況が良く理解できました。U-NEXTで見ることができます。
ドラマで見るとリアルで状況が分かりやすかったのでご興味ある方はご覧ください。
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